INTRODUCTION 解説

かつて一世を風靡した大女優の孤独と葛藤、
そして美しさを描く極上のドラマ

ジュリエット・ビノシュ × クリステン・スチュワート × クロエ・グレース・モレッツ
豪華女優たちの艶やかな競演!

2014年の第67回カンヌ映画祭コンペティション部門に出品され、メディアから“女性たちへの賛辞”と称えられた『アクトレス ~女たちの舞台~』は、『感傷的な運命』(00)、『DEMONLOVER デーモンラヴァー』(02)、『クリーン』(04)等で知られるフランス映画界の若き巨匠、オリヴィエ・アサイヤスが、終生のテーマである“過ぎゆく時間”に関して新たなアプローチを試みた最新作だ。アサイヤスにこの企画を打診したのは、彼が脚本家として映画界にデビューしたアンドレ・テシネ監督作『ランデヴー』(85)で主演を務めたジュリエット・ビノシュだった。当時のビノシュは20歳。映画は舞台「ロミオとジュリエット」を通して現実と非現実、過去と現在が交差する幻想的なラブストーリーだった。その後、アサイヤス脚本、テシネ監督の『溺れゆく女』(98)を経て、『夏時間の庭』(08)でようやく監督と主演女優という立ち位置で協力し合えたビノシュとアサイヤスだったが、まだやるべきことがあると考えていたビノシュは、映画のクランクインから遡ること数年前、アサイヤスに、時間と対峙する女性の本質をより掘り下げて欲しいと、そっと耳打ちしてきたという。その時、「ジュリエットにとっても私自身にとっても、過去に遡り、現在そして未来について問いかけるべき時が来たと実感した」と語るアサイヤスは、早速脚本の執筆に着手。その後、たった2週間で完成したという脚本が、結果、2人にとって前作から16年目に実現した4作目のコラボ作として、衆目の中、世界に向けて発表されることとなる。

マリア役のジュリエット・ビノシュが、ヨーロッパは勿論、ハリウッドでも活躍する国際派の売れっ子女優を、セルフパロディの如く軽妙に演じて白眉なのは誰もが認めるところ。特に、女優としての自我に固執しながらも、他者からの助言を得て新たな境地に立つまでの精細な演技はビノシュならではのものだ。特筆すべきは、マネージャーのヴァレンティンに扮して才能の片鱗を見せつけるクリステン・スチュワートではないだろうか。何よりもマリアの意思を優先し、常に冷静に状況を分析し、示唆に満ちた言葉の数々をマリアに放つヴァレンティン=クリステンにカンヌは熱狂し、映画誌は勿論、芸能誌の“ヴァニティ・フェア”までもが「クリステン・スチュワートは『トワイライト』で彼女を酷評した者すべてに反撃を食らわせた」と絶賛。2015年のセザール賞でアメリカ人女優としては史上初の助演女優賞が授与されたことからも、その演技がいかに精密で魅力的かが伺える。

また、劇中で演じられようとするリメイク版の舞台で、かつてマリアが扮した若いヒロイン、シグリッド役に指名される新進ハリウッド女優、ジョアン・エリスを演じるのはクロエ・グレース・モレッツだ。才能に恵まれ、怖いもの知らずで、小悪魔的にゴシップをばら撒き、若さ故の自信に満ちた態度でマリアに接するジョアン役のモレッツは、今の彼女の年齢に相応しい適役だ。他に、新進舞台演出家、クラウスにはラース・アイディンガー、ジョアンが不倫中の作家、クリストファーには『ブルックリンの恋人たち』(14)のジョニー・フリン、マリアを見出した演出家の妻、ローザにはドイツのベテラン女優、アンゲラ・ヴィンクラー、マリアのかつての共演者で舞台俳優のヘンリクにはハンス・ツィシュラー等、新旧の実力派俳優が脇を固めている。

また、フランスのブランド、シャネルが授賞式のシーンでマリアが纏うドレスやジュエリーをはじめ、劇中で使用されるコスチュームを提供し、メイクアップも担当しているのも話題のひとつだ。シャネルは同時に、デジタルではなく35ミリでの撮影を熱望したオリヴィエ・アサイヤスのために、不足した製作費の一部を援助している。文化発展のために優れた才能をサポートするハイブランドのパトロン的存在意義も記しておきたい。